奈良地方気象台が皆さんの質問に回答します
令和7年6月11日(水曜日)放送のFMまほろば「とんとんNEWSワイド」で、日常の天気の疑問、災害に備えての対策など、みなさんが気になることを募集したところ、たくさんの質問をいただきました。どうもありがとうございます。
これらの質問は、令和7年9月10日(水曜日)放送のFMまほろば「とんとんNEWSワイド」で地方気象台の方から回答していただきますが、時間の都合上放送できなかった質問もありますので、すべての質問と回答についてこのページに掲載いたします。
質問と回答
10年に一度の雨、100年に一度の雨というのを天気予報で聞きますが、田原本町では、だいたい何ミリメートルの雨が該当するのですか?
気象庁ではそのような現象を極端現象と呼んで、観測結果をもとにした推定値に加えて将来予測に基づく情報を充実させた「極端」現象発生頻度マップ」を提供しています。
それを見ると田原本町のアメダス地点では、日降水量で10年に一度の雨が130ミリ、100年に一度の雨に194ミリの雨が該当するとされています。
今年4月、運動場に雷が落ちる事故がありました。特に、遠くで雷が光ったり鳴っていたりしたとき、どのタイミングで避難すればいいですか、雷の仕組みと対処法を教えてください。
今年4月は上空に寒気が滞留していて、地上付近は南から暖かく湿った空気が流入し、大気の非常に不安定な状態となっていました。雲は発達し積乱雲となり、積乱雲の中では上昇流や下降流があり、雲粒や雨粒、氷粒が上下運動をします。すると摩擦が起こり電気が発生し、蓄積され、その蓄積された電気が地表面に放電するのが落雷です。
事前に天気予報を確認し、雷注意報が発表されていたり、雷ナウキャストで活動度1以上が予想されている場合は、屋外での行動は控えていただくことが大切です。すでに屋外活動している場合は、積乱雲が近づくサイン(真っ黒い雲が近づいてきた、雷の音が聞こえてきた、急に冷たい風が吹いてきた)を感じ取ったら、速やかに安全な場所(建物の中や自動車)に避難しましょう。木や電柱の下は大変危険です。4m以上は離れましょう。
ラジオ放送を聞きました。気象台の方に質問します。田原本町で発生しやすい自然災害はなんですか? それに対する備えとして、どのような対策が有効ですか? 田原本町の気象パターンは、近年どのように変化していますか? その変化が地域に与える影響について教えて下さい。 最後に普段の業務で特にやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか? 教えて下さい。よろしくお願いします。
発生しやすいかどうかは別として、山がなく低い土地が多いため過去には大雨による浸水害や洪水災害が多く発生しています。田原本町役場で発行されているハザードマップを確認し、自分の住んでいる場所がどのような災害が起こりやすい地域なのかを把握しておくことが大切です。
田原本町に限りませんが、全国的に1時間50ミリ以上の非常に激しい雨の降る回数が増加しています。そのため、浸水害や洪水災害、土砂災害により多くの犠牲者や被害が起こっています。
住民のみなさんの生活と安全を守る業務を行っていることに対してやりがいを感じています。
最近は1時間に30ミリを超えて雨の降る回数が多くなってきていると感じています。そこで、実際に増えているのでしょうか? そして、田原本町が浸水するような状況になるには、どの程度、田原本町やその上流に雨が降れば危険な状況になるのでしょか、教えてください。
奈良県内のアメダスで、1時間に30ミリ以上の雨を観測した年間の回数は、多い年や少ない年などの変動はありますが、長い目で見ると少しずつ増えています。1地点当たりの回数で示すと、10年で0.35回の割合で増えていっています。
雨の降り方にもよりますが、1時間30ミリ以上の激しい雨が降るような場合は浸水害等の災害が発生する可能性があります。
またお住まいの地域で雨が降っていなくても川の上流で激しい雨等が降っている場合はお住まいの地域の河川の水位が上昇し、洪水災害の発生するおそれもあります。
事前にハザードマップで、浸水想定区域や浸水の深さを確認しておくことも大事です。
このため、レーダー等で雨雲の状況を確認していただくとともに、土砂災害、浸水害、洪水災害の危険度の高まりを面的に確認できるキキクル(危険度分布)で状況を確認することが重要です。
また、雨が同じ場所で降り続くような場合は激しい雨に至らない降水でも災害が発生する可能性があります。
気象台では浸水害や洪水害等の発生する可能性がある場合は大雨や洪水の注意報や警報を発表します。気象台が発表する大雨や洪水の注意報や警報、キキクル(危険度分布)を確認してください。
トカラ列島では地震が続いていますが、南海トラフ大地震との関連性はないのでしょうか、とても不安です。奈良県に影響がある地震について、詳しく教えて下さい。
まず、トカラ列島近海で続いている地震活動が、南海トラフ大地震に影響を与えないか、についてお答えします。「トカラ列島の地震活動域は、南海トラフ地震の想定震源域から離れているため、南海トラフ地震に与える影響はない」と考えています。
つづいて「奈良県に影響のある地震」について。奈良県に影響のあった過去の地震の一つに、幕末の1854年7月9日に発生した「伊賀上野地震」があります。この地震は、奈良県の北東側にある「木津川断層帯」が活動した地震だと考えられています。この地震で、「奈良で280人」の方が亡くなりました。毎年、奈良県で行われる「緊急地震速報」対応訓練「奈良シェイクアウト」が、7月9日ころに行われるのは、この地震を意識してのことかと思います。
今、奈良県で一番注意が必要な地震は、奈良市から桜井市にかけて奈良盆地の東へりに沿って伸びる「奈良盆地東縁断層帯」の活動で、奈良県ではこの断層で想定される最大の地震が発生した場合、奈良盆地を中心に広範囲で震度7の揺れとなり、田原本町でも震度6強の揺れになると予想されています。
南海トラフ大地震について教えて下さい。 1.南海トラフ大地震の発生確率や想定される時期について、最新の予測情報を教えて下さい 2.地震の情報はどのように提供されますか? 3.地震発時の緊急避難指示や推奨される避難行動について教えて下さい よろしくお願いします
南海トラフでは、海のプレートであるフィリピン海プレートが私たちの暮らす近畿地方が乗っている、陸のプレートの下へ沈み込んでいます。南海トラフ地震は、南海トラフ沿いの駿河湾から日向灘にかけてのプレート境界で、過去に繰り返し100-150年間隔で発生している巨大地震です。
1. 次の南海トラフ巨大地震の発生確率は、令和7年1月1日現在、向こう30年間で80%程度です。地震が発生する時期は分かりません。
2. 南海トラフ巨大地震が発生する可能性が高まったと考えられる段階で、南海トラフ地震臨時情報を発表します。
地震情報の流れは次の通りです。
直後 | 緊急地震速報 |
約90秒後 | 地震速報 |
約3分後 | 大津波警報、津波警報、津波注意報 |
約5分後 | 地震情報 |
約10分後 | 長周期地震動に関する観測情報 |
約15分後 | 推計震度分布図 |
約30分後 | 地震解説資料 速報版 |
約30分後 | 南海トラフ地震臨時情報(調査中) |
約1~2時間後 | 地震解説資料 詳細版 (報道発表) |
約2時間後 | 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒、巨大地震注意、調査終了) |
南海トラフ巨大地震が発生した後にも、同じ流れで情報を発表しますが、約2時間後に発表される南海トラフ地震臨時情報は(巨大地震警戒)です。
3. 地震発生時の緊急避難指示や推奨される避難行動
南海トラフ地震発生時に推奨される対応行動
奈良県では津波の影響はなく、地震の大きな揺れの影響を受けます。
まず、緊急地震速報がありますから、大きな揺れに備える対応を取り、身の安全を図ってください。大きな揺れが長時間続きます。
地震発生時にできることはあまりなく、事前の対策(耐震固定、避難スペースの確保、必需品の備蓄など)を行っておくことが重要です。
最近ゲリラ豪雨等が頻発していますが、やはり地球温暖化(熱帯化?)の影響でしょうか?対策として何かできることはないのでしょうか?
ゲリラ豪雨の定義が無いので、実際の数値で回答しますと、日降水量100ミリ以上の日数、1時間降水量50ミリ以上や80ミリ以上の発生回数は以前と比べて増えてきています。これは地球温暖化による気温の上昇により、大気中の水蒸気の量が増えてきていることによります。このあと地球温暖化が進むと、更にこれらの日数や回数が増えると予測されています。
対策としては、温室効果ガスの排出を削減することに尽きるのですが、我々ができることなどには、節電・節水、冷暖房時のカーテンの利用や着る物の工夫、省エネ家電の利用やごみの減量・リサイクルなどがあげられるでしょうか。
ゲリラ豪雨ってどうしておこるんですか?急にすごい雨が降るのでどうしたらいいかわからないです
ゲリラ豪雨というのは、ゲリラ的に発生し予測が困難な豪雨に対して使われている言葉かと思います。
夏場は強い日射によって地表面が暖められ、空気が湿っていると上昇して雲を作ります。上空に冷たい空気があると、その雲は周りの空気よりも暖かいためどんどん上昇し積乱雲になることがあります。積乱雲の中では氷の粒や雨粒が成長して大きくなりますが、その重みでやがて雨となって地上に降ってきます。地表面と上空の間で温度差が大きく、空気が湿っているときは雲がより発達して、短時間で多くの雨が降る現象が発生します。落雷やひょうが降ったり突風が吹くこともあります。
風が集まる場所では特に、雨雲が発達して急な大雨となりますがその範囲は狭く今の予測技術では場所や時間を正確に予測することはできません。これについては、天気予報や気象情報、気象庁ホームページの現在の雨雲や雷の状況を確認してください。
雨が強まってきたときは、川や低い場所からすぐに離れてください。川の近くは水かさが増え、氾濫する危険があります。また浸水した場所では側溝が見えずマンホールのふたが外れている場合もあり危険です。
南海トラフ地震っていつ来るんですか?田原本町はどんなことになってしまうんでしょうか?準備って何をしたらいいんでしょうか?
まず「南海トラフ巨大地震」が「いつ来るか」について。
過去の南海トラフ巨大地震は100年から150年おきに発生していますが、1度に起きたり、2回に分けて半分ずつ起こったり、2回に分かれて発生した場合も、後の地震が、32時間あけて発生したり、2年間あけて発生したり、毎回多様な起こり方をしています。
次の「南海トラフ巨大地震」は、南海トラフのどこがどの順番に活動するのか、あるいは一度に全体が活動するのか、分かりません。また、発生時期についても、いつ発生するのか、分かりません。次の「南海トラフ巨大地震」で田原本町が受ける影響は、地震の起こり方によって、変わります。
「田原本町総合防災マップ」によると、南海トラフの東側半分程度、または西側半分程度、が活動した場合、町内では震度5強の揺れが予想されます。一度に全体が活動する場合は、震度6強の揺れが予想されます。
震度6強の揺れが発生すると、「人は這わないと動くことができず、飛ばされることもある」「屋内では、固定していない家具のほとんどが移動したり、倒れるものが多くなる」「耐震性の低い木造建物は、傾くものや倒れるものが多くなる」「大きな地割れができたり、大規模な地すべりや山体崩壊が発生することがある」といった様子になります。
地震が発生し、大きな揺れが到達することは、事前に「緊急地震速報」で覚知できますが、その場合でも、地震の大きな揺れが到達するまでに「数秒から数十秒程度」の時間しか確保できません。
私たちが、地震が起きてからできることはほとんどありませんので、地震がまだ起こっていない段階で、備えをしっかりと行っておくことが重要です。例えば、建物の中での安全を確保するためにできる準備として「住宅の耐震化」「家具類の転倒・落下防止対策」があります。
対策を行うことで、住宅の倒壊を防ぎ、倒れた家具でつまずいて転んだり割れた食器で怪我をするなどの危険性を回避し、死傷者数を軽減することにつながります。
また、災害時に備えて各家庭で実施する「備蓄」があります。大地震時には物流が滞り、店頭で必需品が手に入らなくなる状況が生じることがあります。各家庭で「備蓄」を行うことで、新たに必需品が手に入らなくなった場合に、困難な状態に陥ることを避けることができます。普段から生活必需品をある程度確保しておいて、少なくなったら買い足すという方法が推奨されます。
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担当課:防災課安全防災係
電話:0744-34-2059